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横山秀夫さんの「半落ち」を読んでみた ネタバレ少々/感想

今回紹介するのは横山秀夫さんの「半落ちです。現職の警察官がアルツハイマーの妻を殺害して自首。取り調べには素直に応じて、動機や殺害方法などは明かすが、殺害から自首までの空白の二日間を頑なに語ろうとしない。様々な憶測が飛び交う中、口を閉ざす理由とは?

 半落ち

▼志木和正

県警本部捜査第一課の強行犯指揮官の志木和正は、上からの命令で現職の警察官による妻殺しの取り調べを担当することになった。自首してきた梶聡一郎警部は、取り調べには素直に応じて、妻・啓子がアルツハイマー病に侵されていたこと、動機や殺害方法などを淀みなく明かした。しかし、殺害から自首までの空白の二日間、あなたはどこで何をしていたのですか?との質問になると一切話そうとしない。

取り調べは半落ち状態で停滞するが、空白の二日間に梶が歌舞伎町に行っていたことが判明する。また、梶の自宅には『人間五十年』と書かれた書があった。自首直前に書いたとみられるその言葉に込められた梶の思いとは何か。

しかし、志木が取り調べに用意された時間はあまりにも少なく、歌舞伎町というマイナスなイメージを恐れた上からの圧力に為す術もなく、用意された虚偽のストーリーに屈するしかなかった。

 

▼佐瀬銛男

地方検察庁の佐瀬銛男検事は、梶を取り調べして作成した自白調書を読んで捏造供述していたことを見抜き、組織ぐるみで隠蔽行為をする警察と徹底抗戦する構えであった。梶の担当を外された志木から後は頼んだと複雑な思いのバトンを渡された佐瀬が本腰を入れて調査に乗り出そうとしたとき、県警からある取引を持ちかけられる。佐瀬一人の力ではどうすることもできずに取引に応じることになり、結局は泣き寝入りするしかなかった。

 

▼中尾洋平

東洋新聞記者の中尾洋平は、偶然にも捏造した供述というネタを掴み、梶の事件と結び付けて、空白の二日間をを深堀りしていく。供述調書の嘘や歌舞伎町というワードに辿りつき、志木、佐瀬らに確認を取ろうとするが適当にあしらわれてしまう。供述の捏造、県警と地検の対立。そして、裏取り引きなどとびっきりのネタをどう料理するのかは彼の手にかかっていた。

 

▼植村学

啓子の姉である島村康子からの依頼で梶の弁護を担当することになった植村学。許された僅かな時間で面会に臨んだ植村だったが、歌舞伎町を話題に出しても有力な証言を得ることができなかった。それならばと泣きどころを攻める方法に変えたが、彼の口から語られたのは守りたい人がいるんですとの悲痛の言葉だけだった。

面会後、記者の一団を前にして植村は何を語ったのか?

 

▼藤林圭吾

梶の事件を担当することになった裁判官の藤林圭吾。彼が一筋縄ではいかないと臨んでいた初公判は波乱もなく閉廷した。空白の二日間をなかったことにする警察、検事、弁護士による利害関係の茶番劇に唖然とし、真実の解明を放棄していることに憤りを感じていた。

結局、梶に言い渡された求刑は懲役四年。軽すぎる判決に藤林は納得できずにいた。なぜ梶のために心をひとつにできるのか?何もかも分からないまま弁論は続き法廷の中に孤独があることを、藤林は初めて知った。

 

古賀誠

来春には定年を迎える刑務官の古賀誠司。彼が担当する刑務所に入所した受刑者・梶聡一郎の存在はやっかいであった。自殺の恐れありとの情報から厳重警備を敷いて監視を強めたが、五十歳の誕生日を迎えても表情や態度が変わることはなかった。それでも梶の様子を知りたくて電話してきた志木の言葉を信じるなら、梶には生きている理由がない。引き続き監視の目を緩めることなく、古賀は梶の様子を視察するのが日課になっていた。

その後、志木が探し出した梶攻略の鍵。法や規則を破ってまでも梶に会わせたかった相手と対面した古賀は全てを悟った。

 

感想/まとめ

面白かった。

正義とか正しさとかを抜きにして、組織の一員として望まない選択を迫られることを実感させられた。梶を中心に、真実を追求した彼らの物語を忘れずに心に刻みたい。全体を通じて引きこまれるストーリーだった。

 

骨髄移植、ドナー登録取り消し年齢ですか。

いつか彼の作ったラーメンを食べることができると良いですね。