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麻耶雄嵩さんの「あいにくの雨で」を読んでみた 感想

今回紹介するのは麻耶雄嵩さんの「あいにくの雨で」です。雪に囲まれた廃墟の塔で起きた密室殺人事件に挑む高校生。一筋縄ではいかないミステリーの真相とは?

 あいにくの雨で

いきなり第十三章から始まり、雪に囲まれた廃墟の塔で起きた密室殺人事件を調べている高校生・烏兎(うと)と獅子丸(ししまる)の様子が描かれている。犯行に使われたであろうトリックの証拠を掴み、トリックの目処もついた。犯人の目星も付いており、後は告げるだけと物語の終わりの雰囲気を醸し出していた。

 

そして本書は事件が起きる前に戻る。

どこにでもありそうな田舎町で暮らし、卒業と受験を控えた高校生・如月烏兎、熊野獅子丸、香取祐今(うこん)の三人組。祐今が廃墟となった塔から明かりが洩れていることに気付き、面白そうだから行ってみようと提案した。彼の面白いは信用できないが、塔に続く行きの足跡だけが一筋残っていること、誰かが塔の中にいることなどを興奮気味で要領を得ない祐今に変わって獅子丸が説明してくれた。あまり乗り気ではない烏兎だったが、これもつきあいってやつだと納得し、廃墟の塔へ向かうのであった。

 

塔の中は、誰かが棲んでいた形跡が残されていた。最近浮浪者みたいな人がうろついているとのうわさが流れていたことを思い出した彼らは、一応用心して進んだ。そして、見つけてしまった血痕。その先に倒れている浮浪者。嫌な予感がしておそるおそる近づくと、後頭部を割られて見るからに絶命していた。その後の捜査で、浮浪者の正体が行方不明だった祐今の父親だったことが判明した。かつてこの塔で祐今の母親を殺されて、容疑者として失踪中の身だった。父が母を殺して、挙句に同じ場所で死んでいたこの現状を踏まえると、祐今が不憫でならない。しかし、何故この町に戻ってきて死んでいたのかが疑問視された。

 

その後、祐今の母親を殺された日も雪が降っていて、塔には彼女の足跡しか残されていなかった、と獅子丸が信頼を置く教師の矢的から教えられた。二つの事件の関連性は不明だが、真犯人は別にいて、祐今の父親は犯人を探し求めて殺されてしまった可能性が高まった。烏兎たち三人とお目付役として仲間に加わった矢的先生は、自分たちの手で犯人を捜すことに決めて動き出した。

 

被疑者として名前が挙がったのが祐今の祖父である。だが、事情を聴こうにも間が悪いことに恒例となった駆け落ちの最中で現在どこにいるのか定かでない。さらに駆け落ち相手の多津家に泥棒が入る事件が発生し、物騒なことが立て続けに起きてしまう。時期が時期だけに、疑って入り、幅広く視野を持つことが大切である。

 

ある手がかりから、居場所を突き止めることに成功。真犯人の存在を示唆すると、今にも消えていなくなりそうな声で一言つぶやき、何か思いつめた様子が印象的だった。そして、旅館まで訪ねてきた烏兎たちを帰らせた。

 

だが、翌日になると祖父が殺されて、多津も祐今の母親、父親同様に塔で死んでいるのが発見された。烏兎たちが、かき乱したことで最悪な展開を迎えてしまったのか?あの選択は正しかったのか、自問自答するがもちろん答えは見つからない。それでも情緒不安定になりつつある祐今のためにを合言葉に烏兎と獅子丸は調査を進めていく。

 

一方で、烏兎たちが通う学校では生徒会が各クラブの予算配分の権限を持っていた。かつて烏兎と獅子丸は生徒会業務の遂行を円滑にするために内偵を行うメンバーだった。最近、予算案の情報漏えいしていることが判明し、調査をまかされたのだ。

 

学校内外で大忙しの烏兎と獅子丸。

クライマックスに予想外な展開が待っていた。

 

感想/まとめ

面白かった。事件解決一件落着かと思いきや、すっきりとは真逆の感情を残し終わってしまった。青春ミステリーとして、爽やかさとは無縁。それもまた良さだと感じる日がくるのだろうか?

 

お約束として、登場人物の名前に馴染むまでが苦労しました。ハハハ。