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東野圭吾さんの「ラプラスの魔女」を読んでみた ネタバレあり/感想

今回紹介するのは東野圭吾さんの「ラプラスの魔女です。別々の温泉地で起きた硫化水素ガス中毒による死亡事故。それは不運な事故なのか、それとも故意なのか?

 ラプラスの魔女

▼登場人物

羽原円華  :北海道で竜巻に巻き込まれて母親を亡くす。羽原全太郎博士の手術を受け、謙         人と同様な存在になる。ラプラスの魔女

甘粕謙人  :植物状態になるが、羽原全太郎博士の手術により快復。情報処理能力が向上          し、未来を予測できる能力を得た。ラプラスの悪魔

甘粕才生  :謙人の父親。日本を代表する映画監督。家族を失ってから表舞台から消えた。

羽原全太郎:円華の父親。脳のスペシャリスト。

桐宮玲   ;全太郎の部下。

武尾徹   :元警察官。円華のボディーガード。

青江修介 :地球科学を専門としている大学教授。温泉地で起きた中毒事故を専門家としての        意見を求められる。

中岡祐二 :麻布北警察署の刑事。義郎の事件を追う。

 

映像プロデューサーの水城義郎が、旅行先の温泉地で死亡した。義郎は妻の千佐都と共に赤熊温泉を訪れていたが、付近の山を散策中に硫化水素ガスに巻き込まれて中毒死した。現時点では事件性はなく、不運な事故として判断されていた。

しかし動機を見ると妻の千佐都が怪しい。運よく忘れ物を取りに旅館に戻っていたことで事故に巻き込まれなかったのも本当に偶然か。今回の旅行先を決めたのは千佐都であり、遺産と最近になって加入した生命保険はこのままいくと彼女が手に入れることになる。

実は事故が起きる三か月前に義郎の母・ミヨシから相談を受けていた中岡刑事は、今回の事故をどう受け止めているのか気になり、彼女が入所している老人ホームに連絡を取ってみた。すると義郎の事故後に首吊り自殺したと教えられた。詳しい話しを聞きに老人ホームを訪ねたところ、遺品整理に来ていた千佐都と遭遇する。中岡の職業が刑事だと分かると、自信に満ちた笑みと挑発的な態度を見せたことで義郎の事故死に関与していると疑いを深めた。

 

地球科学を専門としている青江修介は、赤熊温泉で起きた硫化水素ガスによる中毒死の原因究明の依頼を受けて調査のため現地入りしていた。調査の結果、今回の規模の事故を予見することは不可能に近いとの専門家の見解を示して報告を終えた。対策本部で協議をして、念のために事故現場には立ち入り禁止区域が設けられている。千佐都を疑っている中岡も青江の元を訪ねて人為的に引き起こされた可能性について意見を求めたが、可能性はゼロだと否定された。専門家の先生に完全否定された中岡だったが、諦めきれずに引き続き独自に捜査をすることになる。

 

中岡の説を可能性はゼロだと否定したが、時間が経ってみるとその判断は早計だったのではと思うようになっていた。そんな時に今度は苫手温泉で硫化水素ガスによる中毒事故が起きてしまう。亡くなったのは役者の那須野五郎(本名は森本五郎)だと判明した。今回も調査の依頼を受けて現地入りしたが、どう考えても状況は不運な事故を指していた。専門家として無難で当たり障りがない判断をして調査を終えたが、どうも腑に落ちない。赤熊温泉と苫手温泉で起きた中毒事故を単なるで片づけていいのか迷っていた。さらに二つの温泉地で出会った羽原円華の存在も気がかりである。彼女の不思議な能力を目の当たりにして、間違った判断をしてしまったのではと不安が頭から離れない。二つの中毒事故の共通点は映像関係者だということ。その線で調べていると甘粕才生という人物に辿りついた。日本映画界を背負い立つ人物として期待されていたが、ここ十年ほど映画を撮っておらず過去の人となっていた。さらに更新が止まっていた甘粕のブログには家族に起きた悲惨な事故について綴られていた。

 

硫化水素の中毒事故により家族を失った。娘の萌絵が自室で硫化水素自殺を図り、妻の由佳子と息子の謙人が巻き添えになった。謙人はだけは救助されたが、植物人間になってしまった。羽原全太郎博士の手術により奇跡的に回復をした謙人だったが記憶を失っていた。最後のブログには新しい人生を歩む決意を書きこんでいた。それから六年が過ぎて甘粕才生の行方と謙人の快復状態はどうなったのだろう。ここまで関係性のあるキーワードを幾つか手に入れたが、これといったストーリが浮かび上がらなかった。

 

青江の元をまた訪ねた中岡は共犯者の可能性を疑っていた。義郎の事件の犯人は千佐都で間違いないと確信しているが、では共犯者は誰だ?情報を共有した二人は、甘粕才生の若い時の写真と円華が捜している木村という男性が似ていることに気がついた。

木村=謙人?

中岡は事情を知ってそうな円華の父である羽原全太郎を訪ねてみることにした。何か隠していることはつかんだが話すつもりはないらしい。これ以上引き出せそうにないと判断して一旦引きさがった。彼が去った後に羽原全太郎は、これまで情報を一切与えられず蚊帳の外にいた武尾徹に謙人のことを話した。羽原陣営も円華の行方が分からず追っていた。そして武尾の元警察官という視点から青江の存在を掴み、接触することになる。

 

さっそく青江の前に現れた桐宮玲は円華の連絡先を教えろとの迫ってきたが圧に負けず、上手くかわした。そして、これまで連絡が取れなかった円華と接触することに成功した。彼女が指定した場所で信じられない光景を目にする。不可能を可能にした実験。それは二つの温泉地で起きた中毒事故が不運な事故ではなく、人為的に引き起こされたことだと証明していた。

 

この件に深く関わってしまった青江は、羽原全太郎博士から直接真相を教えられた。植物状態から奇跡的に快復した謙人の情報処理能力は桁違いであった。決して大袈裟な表現ではなく、彼には未来の状況を予測できる力が生まれていた。その能力はラプラスの悪魔(数学者のラプラス)に近い。そこに注目した国などの機関により、彼は数理学研究所に預けられて研究されることになる。そこで手術が影響したことまでは突き止めたが、その先に進むには彼と同じように脳手術をする必要があった。しかし、そんな都合よく患者が現れる可能性は極めて低い。そこで健常者への手術という禁断の実験に手を出した。名乗り出たのは円華だった。竜巻によって目の前で母親を亡くした過去があり、謙人と同じ存在になれば、竜巻だって予測できるようになれる。彼女は、ラプラスの魔女になりたかったのだ。

 

羽原全太郎博士は、謙人が犯人だと考えていた。記憶喪失を装い、父親であった甘粕才生に復讐を果たそうと企てている。家族を自殺に追い込んだのが甘粕才生であり、共犯者である義郎と那須野を硫化水素ガスによる中毒事故に見せかけたのも納得ができる。さらに、甘粕親子には重大な欠陥があった。弱いものを守ろうとすると発現する脳が先天的に問題を抱えていたことが分かった。それは家族でさえも例外ではないことを意味した。

 

別口の中岡は甘粕才生の関係者を当たって捜査を進めていくうちにブログの信憑性を疑い始めた。さらに踏み込んでいくと、甘粕才生が完璧主義者で理想的な恋人象や家族象を押しつけていた可能性も見えてきた。ところが真相まであと一歩のとこまで近づいていたのだが、上から圧力がかかり捜査を断念せざる得なかった。

 

そして、事件はクライマックスへ。

舞台は甘粕才生が最後に映画を撮影した廃墟に関係者(甘粕才生、謙人、千佐都、円華、青江)が集まった。甘粕才生の到底理解できない演説を聞き流しながら謙人が計画し予測した時間がやってきた。

すさまじい風がなびき、建物全体が軋みだした。立っているのが困難なほどの揺れがしばらく続いた。謙人の予測が甘粕才生を追い詰めるが、円華の予測で被害を最小限に抑え込み、死者を出さすに済んだ。止めを刺そうと甘粕才生に近づくが、円華に説得されて謙人は行方をくらました。

 

その後、数理学研究所の生活に戻った円華は武尾徹を連れて父親への誕生日プレゼントを買いに出かけていた。青江も真相は胸にしまいこむつもりでいた。温泉地での中毒事故は、犯人不明で悪戯によるものとして処理されることになった。中岡もニュースで事件のことを知ったが、上司にもう考えるなと説得されて、他の捜査に戻った。

 

最後はラプラスの魔女の言葉で締められる

「この世界の未来は、知らないほうがきっと幸せだよ」

 

感想/まとめ

面白かった。「魔力の胎動」を先に読んでしまっていたが、円華ちゃんにこんな過去があったなんてもう一度再読しよう。

最後の一文が印象的ですね。すべてを知ることが幸せだとは限らない。ただ、謙人君は円華ちゃんに救われたのではないでしょうか。仲間という存在ができたのですからね。

 

ナビエ・ストークス方程式、、、意味は良く分からんが単語の名前だけは覚えておこう!