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鳥飼否宇さんの「死と砂時計」を読んでみた 感想

今回紹介するのは鳥飼否宇さんの「死と砂時計」です。世界各国から集められた死刑囚を収容するジャリーミスタン終末監獄を舞台に、死刑囚の青年と老人が遭遇する、摩訶不思議な事件を短編集でまとめられたミステリー。

 死と砂時計

親殺しの罪でジャリーミスタン終末監獄に収容された青年アラン・イシダと最年長の死刑囚シェルツが出会い、監獄内で起きた事件を解決していくミステリー。

ジャリーミスタン終末監獄には様々な事情で世界各国から死刑囚が集められている。死刑囚は、体のどこかにマイクロチップを埋め込まれて監視されていた。

また、この国の公用語であるジャリーミスタン語を覚える必要があるが、労働以外は比較的自由が許されていた。それでも重罪レベルのもめ事を起こしたら、即死刑が待っている。

それでは本編へ行ってみよう。

 

▼魔王シャヴォ・ドルマヤンの密室

死刑囚の刑の執行は、首長であるサリフ・アリ・ファヒールの一存で決まる。執行日が言い渡されるのは、処刑のわずか四日前。そのため死の宣告が下されるまで、収監者にはある程度自由が与えられていた。

今回物語の主となるのは、無から形のある物質を作り出すことができるシャヴォ・ドルマヤンと傭兵として世界各国の戦場で暴れてきたスグル・ナンジョウの二人だ。彼らの死刑執行日が明日と決まっていた。

また、死刑執行の前日に公開告解という囚人たちの前で自由に発言する場を与えられる。罪の告白、無実の訴え、辞世の言葉を残したり等、何かを伝える正真正銘最後の機会なのだ。

この二人が独房の中で死んでいるのが発見された。シャヴォ・ドルマヤンは全身めった切りで、スグル・ナンジョウは喉を裂かれていた。凶器は見当たらない。また、独房は窓ひとつないコンクリートの箱で唯一の出入り口は牢番が見張っていた。現場は密室。

 

そして、一番の疑問点。数時間後には死刑される二人を、なぜ殺す必要があったのか?

 

▼英雄チェン・ウェイツの失踪

チェン・ウェイツは鉄壁要塞ジャリーミスタン終末監獄を脱獄して伝説の英雄となった中国人だ。

死刑囚はマイクロチップと監視員の目による二重のシステムで監視されている。マイクロチップは体のどこかに埋め込まれている。そして、部屋の入り口には電子システムが作動しており、死刑囚がシステムを通過して引っかかると電気ショックを受ける仕組みになっている。

また、人的監視の方では当時監視台で目を光らしていた監視員は屈強な男でよく鍛えられていたのにもかかわらず、首を絞められて殺されていた。凶器も方法も未だにはっきりしない。さらに、満月の夜という月明かりが一番眩しい夜を選んだ理由も不明だ。

大胆不敵なチェン・ウェイツは脱獄方法とは?

 

▼監察官ジェマイヤ・カーレッドの韜晦

囚人たちにとっての駆け込み寺だった監察官ジェマイヤ・カーレッドが殺された。定年を迎えるまであと三日というタイミングだった。目撃者と証拠から浮上した容疑者の死刑囚ムバラクは無実を訴えていた。カーレッドに呼ばれた部屋で下された処分内容の不満から言い争いに発展し、その最中に何者かに襲われて気を失ってしまった。目を覚ますと瀕死の状態のカーレッドが隣にいたので恐ろしくて逃げてしまったとのことだ。

退官後の彼には、家族もいない、趣味もない、時間と金があるだけ。

この意味するものとは?

 

▼墓守ラクパ・ギャルポの誉れ

誰もがやりたがらない墓掘りという重労働を率先してやったり、墓地で寝起きしている変人ラクパ・ギャルポ。そんな彼が死体の肉を食っているという噂が浮上した。その噂の真偽を確かめるために見張っていた死刑囚に電気処刑されて埋葬されているソトホールの遺体を掘り起こし、切り刻んでいる現場を目撃されて、重罪で死刑が確定してしまった。

公開告解でソトホールが生前身に着けていた金の十字架の存在が明らかになった。それが見当たらないので、ギャルポが盗んだとして疑われているが。はてして彼のこれまでの奇妙な行動にはどんな意味が合ったのか?

 

 ▼女囚マリア・スコフィールドの懐胎

男子禁制の女囚住居区で収監二年目となる女囚が妊娠、出産する騒ぎが起きた。妊娠が発覚したのは、マリア・スコフィールド。ここに収監されて以降、一三ヶ月は男性と接触していないと女医ライラも証言している。

彼女はどのようにして妊娠したのか?

 

▼確定囚アラン・イシダの真実

とうとうこの日がやってきた。アラン・イシダにも死刑確定の宣告が下されたのだ。独房に放り込まれて四日後に迫った死を待つだけとなった。そんな彼の元へシェルツ老人が面会に訪れた。これまで監獄で起きた摩訶不思議な事件をその明晰な頭脳でいくつも解決してきた。助手として事件に携わったアランが師と仰いでいた人。彼の助言に従ってこれまでの人生の振り返りと、ここに来ることになった経緯を記憶に沿って話し出した。

 

彼の犯した罪は両親殺しだ。

 

そして、エピローグに明かされる光りなきラストへ向かっていく。

 

感想/まとめ

舞台設定が面白かった。女囚マリアからの流れがぶっ飛んで最後の一行で彼の評価が一転した。息子よりもウイルスを案じる狂気がまた読後感をかき乱して落ち着けない。奈落のどん底へ突き落とされた気分だ。

 

また気になる作家さんがひとり増えてしまった。