芦沢央さんの「悪いものが、来ませんように」を読んでみた 感想
今回紹介するのは芦沢央さんの「悪いものが、来ませんように」です。お互いに悩みを抱えた女性の関係性。良くも悪くも気持ち悪さが癖になること間違いなし。どんでん返しもありますよ。
悪いものが、来ませんように
紗英は不妊と旦那の浮気に悩んでおり、なっちゃんと呼んで気軽に話せる仲の奈津子に愚痴をこぼしていた。一方、奈津子も子育てとボランティア仲間たちとの関係に悩みを抱えていた。紗英と奈津子はお互いを心の支えにしており、ちょっと仲の良すぎる友人のような関係性が見て取れます。
ある日、紗英の夫が殺されているのが発見されて物語は大きく動き出します。歪んだ愛の形が招いてしまったこの事件。犯人は逮捕されるが、終盤に明かされる紗英と奈津子の関係性は驚愕することでしょう。犯行動機にも歪みが生じており、最初から最後までこの二人には振り回されていた。
物語は紗英視点、奈津子視点、第三者視点の三つの構成で描かれている。プロローグから序盤にかけて紗英と奈津子の人物像を読者に思い込みを植え付けることで「仲の良い友人」と先入観を持たせることで紗英と奈津子の関係性をカモフラージュさせる巧さが目立った。
▼登場人物
庵原紗英 :主人公(奈津子の〇)
柏木奈津子:主人公(紗英の〇)
庵原大志 :紗英の夫
鞠絵 :紗英の妹
梨里 :幼稚園児
奈津子の子育て、紗英と奈津子の関係性、梨里のポジション。良く考えられている構成だと思いますね。
感想/まとめ
面白かった。いや~騙されましたね。こういうタイプの小説もいいですね。
一卵性母娘と言う言葉を知った作品。大人になっても卒業できない母娘。歪んでいたがこれも一つの愛の形なのかな。仲が良いことは素晴らしいことですが、依存までいってしまうとこういった事件の引き金になってしまう恐れがあるのでしょうね。
感動も作為的で読後感もあまりよろしくない。だが、タイトルに込められた愛情は本心だと思うし、その願いは共通なんでしょうね。