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村山早紀さんの「桜風堂ものがたり」を読んでみた 感想

今回紹介するのは村山早紀さんの「桜風堂ものがたり」です。本に携わる人たちの物語。慣れ親しんだ居場所からの旅立ち、巡り巡った先で心温まる奇跡の出会いが待っていた。

 桜風堂ものがたり

老舗星野百貨店にある銀河堂書店で働いていた月原一整。積極的に人付き合いをする性格ではなかったものの、店長や同僚からの信頼は厚かった。

店長から『宝探しの月原』と冗談で呼ばれることもある。人の手に渡らず知らぬまま埋もれていく本も多いなか彼は、話題になる、売れる、人気になる本を見抜く力に長けていた。

そんな彼の人生を変えてしまう出来事が起きてしまう。

中学生の万引き犯を捕まえるために追いかけた一整の目の前で車にはねられてしまう。幸い命に別状はなかったが入院することになった。

少年はクラスメイトにいじめられ、脅されて仕方がなく万引きをしていた。

世間の同情を誘ったのか、やりすぎだの声が相次ぎ次第に銀河堂書店の方へ非難の矛先が向けられた。ネット上でも炎上、クレームの電話の嵐が鳴りやまない。当事者の一整も精神的参っていた。

自分が身を引けば元通りの平穏な毎日がみんなに訪ねると思い、学生時代から10年働いた銀河堂書店を辞めることにした。

 

次の居場所を探す旅へと出かける。

ふと思いついた、会いたい人がいた。

一度も会ったことがない、ネットでの付き合いしかない。

小さな町で古い書店、桜風堂書店を経営している店主に会いに行こう。

 

ここから一整の第二の物語がはじまる。

 

感想/まとめ

本に携わる人たちのひたむきな思いに胸を打たれ、本が好きだという気持ちが痛いほど伝わってくる。もちろん苦労や悩みなど書店が日々抱えている現状も忘れずに訴えている。ネット通販や電子書籍が馴染み、最近のトレンドにもなりつつある若者の本離れ、年々書店の苦境に立たされている。

目的もなく本屋さんに立ち寄ってうろうろするのが好きな僕としても悲しく、さびしい時代になりましたね。装丁やPOPを見るだけでも楽しいのに。

時代錯誤にあらがって知恵と工夫を組み合わせて生み出す全国の書店員のみなさんに頭が下がる思いです。

 

銀河堂書店を離れるまでは正直読むことが辛かった。リアルを追求したのかいじめや万引き、炎上の後味の悪さは最後まで尾を引いてしまった。

桜風堂書店で新たな出会い、苦境に立たされていた現状に力添えの決意を固める。導かれるようにこの地に降り立った月原一整。成功へのかけ橋は、想い。偶然ではなく必然だったのでしょうね。

最終的にリアルと幻想(ファンタジー)両方味わった気分でした。

 

メインストーリーの他にサブストーリーも豊富。それぞれの想い、後悔、最後には自分の仕事を全うする精一杯な気持ちがひしひしと伝わってきた。誰れもが主役、脇役にもなったPOP作成は見所です。

 

あとがきも面白かったので是非。