~読んできた本の足跡~

~のんびりまったり日々読書~アニメや雑談も~

倉知淳さんの「過ぎ行く風はみどり色」を読んでみた 感想

今回紹介するのは倉知淳さんの「過ぎ行く風はみどり色」です。猫丸先輩シリーズ3冊目になります。シリーズ唯一の長編であり、読み応え抜群ですよ。

 過ぎ行く風はみどり色

10年ぶりに実家に帰ることになった方城成一。祖父が怪しげな霊能力者にのめり込み母から説得してくれと頼まれたからだ。母も対抗して心理学に詳しい研究者に頼んでインチキを暴こうとちょっとした騒ぎになっているらしい。祖父と進路のことで対立して家を強引に飛び出して以来の帰省、ためらう気持ちがいまだに残っていた。

 

家族と顔合わせを済ませ、霊媒師と研究者それぞれの言い文を聞き、ある程度は理解した。そこで霊媒師の提案された降霊会(霊を呼び出す)を行うことになった。

 

実際にやりとりを見て、こんなことが一般家庭で催されるとは普通ではない。母の言ったことは大げさではなく、確かに家の中はごたごたしていると感じ取った成一。

 

日を改めて解散し、これから家族団欒久しぶりの夕食といった矢先、事件が起きる。

密室状態で祖父が殺されていた。現場に誰も近付いていない。関係者及び家族にはアリバイがある。

お手上げ状態。成一は頼みの綱、学生時代の先輩である猫丸に相談することした。

しかし、タイミングが悪く忙しいらしい。恐竜の化石が発掘しているらしい、ロマンを求めていたのだ。

 

さて、慌てだしくなった方城家。それでも中止にならず降霊会は行われることになった。呼び指すのを祖父の細君ではなく、殺された祖父に変更された。

 

そして、準備が整い、降霊会が開催された。そして第2の事件が起きる。

霊媒師が殺されたのだ。暗闇の中、最初に席もシャッフルした。お互いに小指を乗せ、手は動かせない。席を外せば気づかれてしまう。関係者が一同しているこの中でどうやって殺したのか。

 

やはり頼りになるのは猫丸先輩だ。恐竜の化石が偽物だと分かり、すぐさまこちらの事件に食いついた。

成一と共に関係者に話を聞きに行き、一つの答えを見つけた。

犯人は一体誰、そして殺害方法は。その意外な方法に驚くこと間違いなし!

 

感想/まとめ

ミステリーとしても面白い。それ以上に仕掛け、トリックが素晴らしいです。

猫丸先輩も言っていたように神がかりと科学は延々と続いている争い。どちらを信じるか、信じないかの平行線。まだまだ人間の知恵では割り切れない問題だと言われ感心しました。

そのうえで、霊媒師の生い立ちを聞いたり、降霊会でのネタを知る。また、研究者側の面白い理論も聞けた。ほんと勉強になります。

 

事件のカギとなる成一の従妹である左枝子。

交通事故で事故で体が不自由になり、ほとんど外にも出られない。

先の事故で両親を亡くし、家政婦のフミが持てるすべての愛情を注いで育ててくれた。

無邪気な、清純な少女。

左枝子を託すふさわしい伴侶が見つかるまで守ると決意していた成一はいつの間にか苦痛に感じていた。そして、逃げ出した。

だからこそ今回こそは守りとおさなくてはならない。

世間から、何者かの悪意から。

 

左枝子パートでは、研究者として方城家を訪ねた神代に恋愛感情があるような描写がされている。一歩引いて状況を見守る引っこみ感の強いお嬢様。

人間の心理、体が不自由という点を逆手に取ったこの仕掛け。

勘違いをしていたなんて想像もしてませんでしたよ。

 

猫丸先輩が登場してあっという間の解決。優しさに胸を撃たれくらくら。読後感もいいのでおススメですよ。

 

今、ワールドカップシーズンなのでこの単語で『過ぎ行く風はみどり色』『星降り山荘の殺人』のツートップは是非読んでほしい。