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米澤穂信さんの「儚い羊たちの祝宴」を読んでみた 感想

今回紹介するのは米澤穂信さんの「儚い羊たちの祝宴です。前回紹介した『満願』と同様、闇、ホラー感漂う連作短編集です。バベルの会と呼ばれるサークルの正体とは。最終章で明かされる驚きの結末をお楽しみに。

 儚い羊たちの祝宴

バベルの会:表向きは大学の読書サークル。幻想と現実とを混乱してしまう儚い者たち。当たり前の顔をして勉学に励み、家に戻れば期待された役割を果たす。だが、心の奥底に、夢想家の自分を抱えているものの集まり。

 

身内に不幸がありまして

大きな勢力を持つ丹山家へ孤児院から引き取られた村里夕日。夕日の役目は、吹子お嬢様の身の回りのお世話でした。更衣のお手伝いやお部屋の掃除が主な仕事でしたが、チェスや囲碁などのゲームの相手、剣道や合気道の練習相手などもしてきました。使用人としてだけではなく友人のように接してくれた。また、吹子は大変な読書家で、夕日もその影響を受けた。

吹子には年の離れた兄、宗太がいる。これが問題児で現在は勘当されている。

大学となり読書サークル「バベルの会」に入会した。夏休み中、避暑地で行う読書会を吹子は楽しみにしている様子。

読書会が迫ったある日、宗太が復讐のため、屋敷を襲撃した。死傷者を出したが吹子と夕日によって追い払い、宗太は死亡として処理された。葬儀のため読書会に参加できませんでした。

この事件の後も、この日に死者が出てしまう。宗太は生きているのか。

吹子によって明かされる真実とは。

 

魔法の言葉ですよね。その理由だけで犯行に及んでしまう恐ろしさ。

種明かしも簡潔で分かりやすい最後の一行だったので楽しめた。

それにしても志賀直哉をここで聞くとは思わなかった。

 

北の館の罪人

六綱家現当主光次の父親、虎一郎の愛人であった母との間に生まれた娘、内名あまり。母の死後、六綱家の人間として生きることを決め、別館で暮らす光次の兄、早太郎のお世話と別館から出さないことを命じられた。

六綱家での暮らしに慣れてきたある日、早太郎からお使いを頼まれる。変わった物ばかりで疑問を持ちながらもこなしていった。

別館に閉じ込められている理由を早太郎から聞いた。そして、命じられて買ってきたものは絵の道具だと知り、一枚の絵を見せてくれた。やがて、体調を崩し日に日に弱っていく早太郎。絵を描き上げて満足したかのように亡くなりました。

バベルの会に属する妹、詠子が絵を見てある指摘をする。

早太郎が絵に遺した意味とは。

 

清々しさを感じる。

 

山荘秘聞

別荘「飛鶏館」の管理を任された屋島守子。日々の管理に精一杯尽くしていましたが、一人のお客さんも迎えることないまま一年が過ぎてしまいました。

ここで以前仕えていたお屋敷のお嬢様が「バベルの会」に参加していたことが語られる。

登山中踏み外し怪我を越智を救出した。お礼を言い、山岳部の仲間が探しに来ると言い残し眠りに就いた。予定通りに山岳部が飛鶏館を訪れます。飛鶏館を捜索拠点に決まり、久しぶりのお客様に喜びを感じる屋島。ベットで休んでいる越智のことを最後まで知らせることはなかった。

屋島守子の目的とは。

 

お金ですべてを解決。ある意味一番平和な物語でした。お肉の描写はドキドキしましたけどね。

P100屋島

ところで、お客様は、いずこに。

言い方が可愛かった。

 

玉野五十鈴の誉れ

小栗家全権力を持つ祖母から人を使うことを覚えなさいと同い年の女の子玉野五十鈴が与えられた。五十鈴との出会いが純香の人生に変化をもたらした。二人で読書に精を出し、学問では大学で学びたいと祖母を説得し、五十鈴と暮らすことまで許された。以前純香では考えられないことだ。

しかし、幸せは続かなかった。大学で「バベルの会」に属し、夏に開かれる読書会を楽しみにしていた純香ですが、叔父が強盗殺人を犯し、屋敷に戻ることになった。これにより、純香の人生は急展開を迎える。

『始めちょろちょろ、中ぱっぱ。赤子泣いても蓋取るな』

 

友達と秘密を共有出来てよかったね。五十鈴とって純香のことがすべてだったのかな。顔が真っ赤になった聞いて、ある程度想像して調べました『金瓶梅』。なるほど彼女にはまだ早かったようですね。

 

 

儚い羊たちの晩餐

荒れ果てたサンルームに一人の女学生が迷い込んだ。日記を見つけ「バベルの会はこうして消滅した」原因について書かれていた。

持ち主はバベル会の元メンバーで大寺鞠絵。会費が払えず除外された。

新しい料理人が大寺家へやってきた。厨娘の夏と見習いの文。厨娘は客の前で調理を披露するのが役目だと提言するのですが、前主人との比べることを嫌う父親は厨房で料理をさせます。料理の腕、味は逸品だが、材料費は高額でした。父親はあまり気にする様子はありません。

バベルの会への参加を認めるよう会長に再度お願いに行ったところ、金額の問題ではない、鞠絵自信に参加資格がないと断られてしまう。さらに、大寺家ならび父親の秘密を知ってしまった鞠絵は、夏にアミルスタン羊を調理してほしいと頼み込んだ。

 

アミルスタン羊の正体を知った時、吐き気がした。

鞠絵どうなったんだろう。壊れてしまったのかな。

 

感想/まとめ

ホラーミステリー。「満願」よりこちらの方が好みでした。

 

振り返ってみると動機などは一般の方からすればありえない。けど本人にとっては死活問題なわけですよ。その不釣り合いなマッチングが面白さ、不気味さを倍増してくれているのでしょう。

 

口調も丁寧で、忠実に命に従う使用人。とてもす素晴らしい心がけだが読み終えて逆に恐ろしいと感じてしまった。

 

おいしく頂きました。