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森見登美彦さんの「夜行」を読んでみた 感想

今回紹介するのは森見登美彦さんの「夜行」です。森見さんの作品は読んだことがなく、アニメ「有頂天家族」を見たくらいです。他にも『夜は短し歩けよ乙女』『きつねのはなし』などの代表作があるので、そちらも是非読んでみたいですね。

 夜行

大橋

英会話スクールの仲間たちと「鞍馬の火祭」を見物しようと持ちかけた。仲間とは大橋、中井、武田、藤村、田辺、長谷川の6人だ。今回は5人で集まった。

 

10年前の夜、英会話スクールの仲間たち6人で鞍馬の火祭を見物に出かけた。仲間の一人長谷川さんがその夜に姿を消した。何一つ手がかりが見つからないまま10年が過ぎた。今回私からみんなに呼びかけたのは、彼女に呼びかけられたからではないだろうかとふと思うことがある。

 

待ち合わせまでにはまだ時間があったので繁華街をぶらぶら歩いていると彼女に似た人が柳画廊に入っていった。そこは「岸田道生個展」と呼び、一点の銅版画が展示されていた。

妙に心惹かれる絵であり、タイトルは「夜行――鞍馬」

 

その後、仲間と合流し、この話をしたところ「岸田道生」に全員関わりがあることが分かった。

 

序盤の入りはこんな感じです。語り手が大橋からそれぞれに移っていきます。

不思議で奇妙な話の連続で、結末も「え?これで終わり?」と明確な答えがなく、スッキリしない感じが続きます。ホラー要素の雰囲気を楽しんでください。

キーワードは、長谷川、岸田道生、夜行の3点。

さて、そろそろ物語へ、どうぞ

 

第一夜 尾道

語り手は中井

出て行った妻が尾道にいると知り、迎えに行くことにした。妻が滞在している場所へ行く途中、不審なホテルマンすれ違った。ようやく辿りついた一軒家は「海風商会」といい外観はまるで廃墟のようだった。

「ごめんください」と呼びかけると、「はい」涼しげな声が返ってきた。その女性は妻ではなかったがよく似ていた。話を聞くと、ここには誰もいなく、中井の妻の行方は知らず、先程すれ違ったホテルマンは夫だということを教えてくれた。

~ホテルマンとその奥さんの過去を知る~

しばらくしてやはりあれは妻だと思い「海風商会」へ引き返した。途中ホテルマンが待ち構えていたが、もみ合いの中、分厚い瓦で殴りつけた。

坂の上で女性の姿を見つける。今度は本物の妻だ。手をつなぎ高台の家へ帰って行った。

 

え? 殺してるけど大丈夫なの?

 

第二夜 奥飛騨

語り手は武田

会社の先輩に飛騨旅行へ誘われた。先輩である増田、彼の恋人の美弥、その妹の瑠璃と4人で出かけた。

旅行先でミシマという女性に出会う。彼女は、未来が見える能力者であり「お二人の方にシソウが出ています」と言い残し別れた。

温泉では、予言通り美弥が消え、探しに行った増田も消えてしまった。少し目を離したすきに瑠璃までも消えてしまった。

温泉に入ると美弥がいた。

 

「お二人の方にシソウが出ています」名前を言わないあたりが上手いですね。

 

第三夜 津軽

語り手は藤村

夫と夫の同僚児島の3人で夜行列車に乗ることになった。

終点の津軽で降り、町を散策していると児島の様子がおかしくなりある家へ案内した。不可解な行動をした児島はそのまま行方をくらまし、消えてしまった。

私は、佳奈ちゃんを思い出した。佳奈ちゃんは子供の頃の友達でクラスの子たちからは嘘つきと呼ばれていた。

あの家は佳奈ちゃんの家だった。佳奈ちゃんは私を呼びかけていたんだ。

 

佳奈ちゃんとは?児島さんは? う~ん、不気味。

 

第四夜 天竜峡

語り手は田辺

田辺は岸田の友人でよく自宅に遊びに行っていた。その集まりは岸田サロンと呼ばれていた。

電車の中でお坊さんと女子高生に出会う。そのお坊さんは、佐伯といい、彼も岸田サロンの常連だった。佐伯は岸田の絵の持っており、岸田を殺したのはその女だと言い残し電車を降りて行った。

「そうよ。私たちはずっと一緒だったの」

彼女はそう言ってほほ笑んだ。

 

誰にとっても岸田さんは特別な人なんだね

 

最終夜 鞍馬

語り手大橋

夜行と対をなす曙光という作品があると知る。夜行が永遠の夜ならば曙光は一度きりの朝。

鞍馬の火祭の最中、仲間たちとはぐれてしまった。大橋は、中井さんに連絡するも何故か不審がられ切られてしまう。藤村さんも同様にだ。

何かがおかしい。

中井さんから改めて連絡があり、再会し詳しい事情を説明してくれた。10年間失踪していたのは長谷川さんではなく私。

こちらの世界では岸田は生きており、彼の妻が長谷川さんだった。

 

根本的にひっくり返った。

 

感想/まとめ

書いていて疲れました。書いていて何が何だか分からなくなりなげやりになってしまった。推理小説で言う犯人に当たる明確な答えがないので自分で見つけなければならない。それが楽しみでもあり、窮屈にも感じてしまう。不思議な作品なのは間違いないです。

 

夜行の世界、曙光の世界がある。いくつもの世界線がある。

長谷川さんは、世界に取り込まれてもみんなを見守っているのかな。仲間たちが遭遇した説明のつかない出来事の数々は長谷川さんがもたらしたのかもしれませんね。

 

最後中井さんに電話をかけたのは、夜行の世界に戻り鞍馬の火祭ではぐれた一日しか経ってないという解釈でいいのかな。

 

p65気に入った文

「僕は旅そのものというよりは、やっぱり旅仲間に興味を惹かれますね。一緒に旅をするというのは、みんなで一つの『密室』に閉じ込められるみたいなものだから」