未来は変えられるのか 高野和明さんの「6時間後に君は死ぬ」
今回紹介するのは高野和明さんの「6時間後に君は死ぬ」です。主人公の山葉圭史は他人の未来が見える能力を持っている。その名はビジョン。このビジョンがカギとなって物語は進んでいく。連作短編の全五章+エピローグ。ちなみに映画もあります。
6時間後に君は死ぬ
主な登場人物
- 山葉圭史ーー主人公。自分の能力について大学院で研究をしている。
- 原田美緒ーー圭史に六時間後に君は死ぬと告げられた相手。親友が約束を忘れていたことを中てられて圭史を信用する。夢は小さな家にたくさんの家族、そしてみんな笑って毎日をくらすこと。
6時間後に君は死ぬ
二五歳の誕生日が目前に迫った美緒はひとりの青年に声をかけられる。「6時間後に君は死ぬ」そう告げられた美緒は薄気味悪さを感じ逃げることに。それでも青年は切羽詰まった口調で「待ち合わせの場所に行っても無駄。友達は約束を忘れているから」と続ける。これから合う友達は几帳面で時間に遅れたことのない。やはりこの青年は信用ならない。自信満々で待ち合わせ場所に向かった美緒。
待ち合わせ場所に友達を姿を認めたが「ごめん。美緒との約束、忘れていた」と後から来た彼氏と去って行った。表情が凍りつき困惑しながらも、青年(山場圭史)に詳しい話を聞くことに。
時の魔法使い
プロットライターとして働く朝岡未来は、幼いころ防空壕で不思議なことが起きていた。近所のこどもたちと神社でかくれんぼしていた九歳のとき、なぜか防空壕で眠っていたことがあった。後で知ったのだが丸一日、二四時間姿を消していたらしい。大人になった今もその一日の記憶がない。
仕事に疲れた未来は郷愁に駆られ当時住んでいた場所を訪ねる。変わりゆく光景に寂しさを感じながら最後にと神社に行くことにする。そこでひとりの女の子と出会う。彼女は「朝岡未来」と名乗った。自分と同じ名前。よくみると瓜二つ。未来はもうひとりの未来と遊ぶことに。
恋をしてはいけない日
飽きっぽい性格のためかすぐ彼氏と別れてしまう未亜。その落ち込み具合を見た友人からよく当たる占い師(山葉圭史)がいると紹介される。圭史は、占いは誤解だと正すために未亜と会ったがここでビジョンを見てしまう。「今度の水曜日。その日だけは、君は恋をしてはいけない」と念を押すように忠告する。
運命の水曜日。未亜は事故現場を目撃してしまったことが原因で恋をしてしまったのだ。
ドールハウスのダンサー
ダンサーを夢見てオーディションを受ける毎日の香坂美帆。それでもなかなか結果が付いてこない。年齢的にあきらめムードが漂う。最近不思議な感覚が広がるデジャ・ビュを見ることがある。記憶を探ってみるが思い出せない。
一方とあるミュージアムが閉館することになる。なんでもこのミュージアムは開館する前から閉館の日が決まっていたらしい。
このふたつのつながりとは。
3時間後に君は死ぬ
原田美緒は期待を胸に膨らませていた。五年前のあれ以来山葉圭史とひさしぶりに再会することができる。自分に気づいてくれるだろうか。再会をよろこんでくれるだろうか。期待と不安が混じる美緒。
そして再会。圭史は美緒のことを覚えていた。懐かしい時間もつかの間ピジョンを見てしまう。美緒を通して自分の死を。未来を変えるために圭史と美緒は動き出す。
感想
高野さんの作品はいつか読もうとしていた所でこのタイトルが目につき読み始め。釣られてしまった感じなので内容等一切知らない状態でのスタートでしたが、タイトルとは逆に心温まる話が多い印象を受けた。
短編集はあまり好まないが連作短編は大好き。どこで繋がるのか考えながら読むのがたまらない。
6時間後に君は死ぬ、3時間後に君は死ぬ、やはりこの二つが面白い。
美緒の死を救う圭史、そして去る。五年後、再会し、逆に圭史の死を救う美緒。
「夢は小さな家にたくさんの家族、そしてみんな笑って毎日をくらすこと」圭史からこの運命を受け入れたら叶うと言われ戸惑う美緒。圭史や会場の皆を犠牲にしてまで手にしてもきっと後悔する。「目の前に幸せがあっても、気づかない女よ。自分の運命は変えるわ」かっこよい言葉。痺れましたよ。
時の魔法使いでは泣いてしまった。二十年前に帰る未来が大人の未来へ
「知ってなのね」
「うん、ずっと。それにね。嬉しかったの」
「嬉しかった? どうして?」
「だってあたし、こんなに優しい人になれるんだもん」
ブログに書いてても泣けてくる。この展開は反則ですよ。
明日に希望が持てる作品。是非読んでみてください。