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七海学園シリーズ短編集 七河迦南さんの「空耳の森」ちょっとネタバレ注意

今回紹介するのは七河迦南さんの「空耳の森」です。個人的に好きな作家さんの一人です。に続く、七海学園シリーズの短編集です。前作の二作品を楽しんでから読み始めることをおススメします。

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空耳の森

冷たいホットライン

恋人である尚子と正彦は休暇をとって登山に来ていた。途中で捻挫をしてしまった尚子を一人山小屋に残して、正彦は目的である野鳥の撮影に出かけて行った。トランシーバーで連絡を取り合っていたが徐々に繋がらなくなる。天候も悪く吹雪いてきた。その頃、尚子が待つ山小屋には大きな黒い影が忍び寄る。

アイランド

ぼくとお姉ちゃんは島で暮らしていた。お父さんは助けを呼ぶために海に出かけて帰ってこない。お母さんはお父さんの後を追っていなくなってしまった。生きるためには食べ物が必要だ。食べ物は地底にあるが危険もいっぱいだ、それでも弟のためにもお姉ちゃんは今日も潜る。

it's only love

カナの結婚式に仲の良かったキラがこないのはおかしい。あたしはキラを想うピッカから相談を受ける。なんでも最近変な年上の彼女がいるらしく心配するピッカ。

仕方がなくわたしは彼の勤め先に向かうが。

悲しみの子

福祉局ホームページのイラスト付き掲示板をチェックしていたボランティアスタッフがある投稿されたイラストを見つけた。二人の女の子が手をつないで立っている姿。それぞれ片方を男性が、もう片方を女性が引っ張って連れて行こうとしている様子だ。離婚の危機で姉妹が離れ離れになるのではないかと心配するが。

さよならシンデレラ

不良少女のリコ。リーダー格として仕切っていた。そんなある日、他中学グループの一人が襲われてお金が盗まれる事件が起きる。被害者ともめ事をしていたリコが犯人として狙われることに。そこに救世主として登場したのが小学校時代の友達マサトだった。

桜前線

高校生になって落ち着いてきたカイエがリコにデートを誘われる。お店で知り合った人と遊びにいくのに付き合って欲しいとのこと。自然にダブルデートの形。傍から見れば順調そうに見えたが実は。

晴れたらいいな、あるいは九時だと遅すぎる(かもしれない)

居酒屋で男は顔なじみに会い、以前から気になっていた女性の話をすることに。その話を聞いていた顔なじみは一つの答えを導いた。その驚くべき答えとは。

発音されない文字

「七つの海を照らす星」「アルバトロスは羽ばたかない」で登場する人たちの物語。

空耳の森

「とわこ、いつかはいくね」不思議な声がヘッドフォンから聞こえてきた。七海学園には永遠子の伝説があったのだ。

 

そして、短編集はひとつにつながる。

 

感想/ネタバレ

僕がこの「空耳の森」を読んだのは最近のことです。前作の「七つの海を照らす星」「アルバトロスは羽ばたかない」はもちろん読んでいましたが、数年前のことでほとんど内容もうろ覚え状態でした。短編集でしたが前作とのつながりもあるらしいと聞き、読み直しました。そのおかげでより楽しむことができました。

こちら空耳の森/ネタバレ感想を参考にしました。

冷たいホットライン

手旗信号が登場して「お!」ぐらいの感想しかありませんでしたが

自分が行かなければ、尚子を助けられる者はいないのだ。

ダブルミーニング(言葉に二つ以上の意味を持たせる)がすばらしい。

確かに二つの意味に捉える事が出来ますね。

晴れたらいいな、あるいは九時だと遅すぎる(かもしれない)

居酒屋の男が冷たいホットラインで尚子を助けた松橋警部補。彼が想いを寄せていたのが尚子だったと分かり、この二人はくっつくだろうと予想した通りでした。ここに登場する安楽椅子探偵は彼女ですね。

わたしの友達が、自分が呼ばれたと思って~あれ、お友達の名前って全然

「七つの海を照らす星」を改めて読んでいたからすぐにわかりました。

アイランド

お姉ちゃんの正体があの茜だったとは。

it's only love

わたし=河合恵美子=カイエこの方程式。前作から懐かしい人たちがちらほら。

悲しみの子

県境をまたいで繋がっていた家、この真相に思わず、倉阪 鬼一郎さんの「三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人」に近い想像してしまった。

北条光クリスティンのお話し。「ピカちゃん」「ピッカ」呼ばれていたね。

さよならシンデレラ

リコの通っている学校。上手く騙されましたがショックを受けましたね。

桜前線

まさかの結末、それでもメールの謎はお見事です。

カイエを助けた中年女性と小学三、四年くらいの男の子がのちに出会うとは。ちょっとしたことだけど繋がるのはすばらしい。

発音されない文字

北沢春菜と佳音の出会いからカフェ・ヴァーミリオン・サンズの真相のお話し。

カフェ・ヴァーミリオン・サンズのオーナーが佳音の実の母親だったとは。

母親に取り込まれそうになった時助けたのはそこにいないはずの春菜。決別するその姿は普段ぼんやりしている彼女とは違い春菜と出会ってから変わることができた証。勇気をもらいました。

空耳の森

「ほんとはこいつかわいくね」ほほえましいの一言です。

 

まとめ

読み終えた後も理解できなかったことが多く今回も解説、感想ブログを参考にさせていただきました。語れるくらい僕自身も成長したいと日頃から思っていますが。

さておきバラバラに見えた一つ一つの章が最後には一つにつながるこの手法、前作同様見事な構成力です。やはり、先に「七つの海を照らす星」「アルバトロスは羽ばたかない」を読むこと、一気に読むことをおススメします。人を覚えるのにごちゃごちゃするし、今回の時系列にも苦労しました。

最後の手旗信号意味は考えなくても慌てふためく姿からあのひとが目覚めたのでしょう。続編へ希望を持てる終わり方だったので楽しめです。